高知県立文学館

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文学館ニュース
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【本の情報】
単行本: 1887(明治20)年10月 市原真影出版
原本は国立国会図書館に1冊あることがわかっているだけの稀覯本。発売禁止になったとも言われている。
石川巌「明治文学稀書解題」によると、石川が百部限定で複製本を出したというが、八木福次郎「「自由詞林」のこと」によれば、復刻本には異同が認められるという。現存原本と異なる版を底本としていたのではないかと推測されている。
※写真は複製本

【作品について】 
植木枝盛の『自由詞林』は、竹内節編『新体詩歌』の影響下で創作したものだと言われています。続々と新体詩が世に現れ始めた時期で、中でも民権詩歌は民権家に愛唱されました。
この詩集が書かれたのは、自由党解党の明治18年から再び中央に返り咲く明治21年までの、枝盛の政治的敗北の時期です。
枝盛は「詩歌ハ早ク情ヲ漏スモノ」「詩歌ヲ作ル者ハ思想ノ害ヲ為シ推究ノ力ヲ損ズルコト多カルベシ」(「無天雑録」明治14年3月尽日(31日)の条)と述べています。抒情の意義を認めない枝盛が新体詩に注目したのは、政治的・社会的実践の武器として考えていたためと考えられますが、『自由詞林』に収録されている「米国独立」などは、この後日本にほとんど定着しなかった叙事詩の一つとして興味深いものです。また「自由歌」は「寧ろ命を 捨てぬとも/捨つべからぬは 自由なり」と自由の重要性を強調するのみならず、専制独裁によって滅亡していくアジア諸国に対し「之を思へば たゞひとり/湧くが如くに 血涙の/浮び来りて 潸然と/袖をうるほす ばかりなり」と詠んだ部分などは、自由党解党という当時の状況を考えると、獲得を果たせなかった自由への絶望的な絶唱とも読めます。

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