高知県立文学館

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文学館ニュース
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【作品紹介】大岡昇平著『堺港攘夷始末』

2021.03.16
  • 大岡昇平
  • 文学PickUp


【本について】
初出:「中央公論文芸特集」1984(昭和59)年秋季号(10月)~1988(昭和63)年冬季号(12月)、(除1986(昭和61)年冬季号)
単行本:『堺港攘夷始末』中央公論社より1989(平成元)年12月に刊行。 ※没後刊行

【作品について】
『堺港攘夷始末』は、1868(慶応4)年、土佐藩士によるフランス帝国水兵殺傷(攘夷)事件である堺事件を題材としています。森鷗外や中山義秀によっても作品化されています。
鷗外の歴史小説観は「歴史其儘と歴史離れ」(大正4)で有名ですが、これは日本の歴史文学に長い間大きな影響を与えてきました。
しかし大岡は、鷗外の歴史小説「堺事件」(大正2)に対して、「「堺事件」疑異」(昭和50)で2つの疑異を示しました。1つは、立会いをしたフランス人は切腹を恐怖して逃げたのではなく、殺された仲間と同じ数の人間が切腹するのを待っただけであること。もう1つは、朝廷の指示によって決定されたと公文書にある藩士たちへの流罪を、土佐藩が流罪にしたように鷗外が作り変え、それが新帝即位によって許された、といった脈絡にしたことです。そしてこれらは、皇室もしくは山県有朋へのすり寄りだと厳しく批判しています。
大岡が目指したのは、公平な歴史的著述でした。しかし歴史資料は誰かの眼を通して書かれ、そこには必ず偏りが生ずるものです。それでも大岡は資料に向き合いながら度重なる修正と補足を行い、ついに未完のまま亡くなりました。

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